日本で2月3日は豆まきの日。
豆には「魔を滅する魔滅(マメ)」というありがたい意味があるということで、「鬼はそと~」と言いながら豆をまくことで、不幸をもたらす鬼を追い出すことができる。
そんな現在の日本の豆まきの起源は平安時代の「追儺(ついな)」だ。
くわしいことはこの記事を見てたもれ。
さて節分のころ、ドイツ人に母国でもこんな魔除けのイベントがあるのかたずねたら、そういう行事は知らないけど有名な魔除けアイテムならあるという。
それは欧米のキリスト教文化圏でよく見る「Horseshoe(蹄鉄:ていてつ)」。
馬の蹄(ひづめ)を保護するためにつけられるこんな鉄の保護具だ。
ヨーロッパではこれを家の入口につけておくことで、悪魔を遠ざけたり幸運のお守りになったりすると信じられている。
くわしい説明は英語版ウィキペディアを見てみよう。
Horseshoes have long been considered lucky. They were originally made of iron, a material that was believed to ward off evil spirits, and traditionally were held in place with seven nails, seven being the luckiest number.
鉄は悪魔を遠ざける物質と考えられていた。
伝統的には鉄の蹄鉄を7本の釘で打ち付ける。
欧米で「7」がもっとも幸運な数字というのは日本でも有名だ。
知り合いのアメリカ人は、日本でいえば招き猫のようなものだと言っていた。
日本のネットでも競走馬が使用した蹄鉄が「インテリア・厄除け・開運祈願のお守りに」というキャッチコピーで販売されている。
こんなふうに魔除けとして扉にぶら下げておく。
でも上下を逆にすると、不幸なことが起きるらしい。
では、なんで蹄鉄がキリスト教文化で魔除けのアイテムになったのか?
日本では江戸時代の都々逸(どどいつ)で「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ」と言われたけれど、ヨーロッパでも馬は悪魔を蹴り殺すことができるのか。
そんなことはなくて、この迷信の由来には諸説ある。
ここでは英語版ウィキペディアにある話を紹介しよう。
10世紀のイギリスに鍛冶屋のダンステンという男がいた。
ある日、悪魔が店にやってきて、ダンステンに馬の蹄鉄を修理するように頼む。
このとき悪魔は人間に化けていたのだろう。ダンステンはそれが悪魔だと見抜いていたけれど、気づないふりをして依頼を引き受ける。
そして修理するかわりに、釘で悪魔の足に蹄鉄を打ち付けた。
激痛に苦しむ悪魔にダンステンは、蹄鉄のある入り口には絶対に入らないという契約を結ばせてから蹄鉄を外してやる。
こういうこワケで、蹄鉄は欧米のキリスト教圏で魔除けのアイテムになりましたとさ。
悪魔でさえ、契約を交わせば必ず守るというのがとても一神教的な考え方だ。
悪魔に蹄鉄を打ち付けるダンステン
この鍛冶屋、世界最強。
ダンステン(ドゥンスタン)は実在の人物
のちにカンタベリー大司教になり、死後はキリスト教の聖人となった。
でも、始まりは異世界ファンタジーアニメみたいな人。
グラストンベリの小村にある教堂のかたわらで生まれた。父ヘオルスタンは富み、親類には3人の司教がいる有力な家柄であった。魔術を行ったかどでイングランド王アゼルスタンの宮廷を追われ、修道士となる。
きょねん結婚したイギリス人の新居へお邪魔したとき、壁に友人からもらった蹄鉄がデザインされたメッセージカードがあった。
ヨーロッパでは(たぶんアメリカも)こんな蹄鉄がウェディング・ギフトとして贈られる。
これは日本円で約5500円
新婚さんには一生残る特別なギフトと紹介されている。
Wedding Gift 2019 Brass Lucky Horseshoe.
Are a couple you care for getting married?
Do you want to get them a special wedding gift that will last a lifetime?
他にも「This unique gift won’t be forgotten」(忘れられないユニークなギフト)とあるけど、これが2つも3つもプレゼントされたらかなりの邪魔。
そういう無計画な人が欧米では多そう。
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